配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2016年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2015年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2014年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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研究実績の概要 |
有限温度・有限密度におけるQCDの性質を解明することは, ハドロン物理学の中心的課題である。特にQCDの相構造(QCD相図)と状態方程式は, 宇宙進化の過程や高密度天体の性質を解明するために不可欠な要素である。しかし, QCDの第一原理計算である格子QCD計算は有限密度領域で実行困難であるため, 有限密度における相構造のほとんどは不確定である。高密度かつゼロ温度における状態方程式は, QCDの数値シミュレーションが困難であるため特に理解が遅れている分野である。定性的には核物質に代表されるバリオン的な状態からクォーク・グルーオン・プラズマのようなクォーク的状態へ相転移すると考えられているが, その転移密度や状態方程式の様子は未だ不確定である。多くの実験データが得られている核物質はバリオン的描像との相性が良いため, 核物質の密度から初めてバリオン的描像により高密度状態を予言する方法は多く行われてきた。しかしこの方法では閉じ込め相転移を記述することができないため高密度状態での有用性は不明瞭である。一方で高密度層におけるクォーク描像に立脚した方法では実験データのインプットが乏しいため定性的な予言に留まり, 天体観測データの解析で必要となる定量的な議論を行うことが困難である。 我々は, 遷移領域ではバリオン的描像とクォーク的描像の両方で系を記述できるはずであるという考えに基づき, クォーク描像を用いて核物質を記述することを試みた。この方法により得られるクォーク描像による有効模型は, バリオン的描像が破綻する高密度領域においても有効であり, 高密度領域の状態方程式に対して有用な予言を与えると期待される。解析の結果, 核物質の性質を再現する模型は得られたものの, 相互作用部分に含まれる不定性を制限するまでには至らなかった。
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