研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、自己免疫疾患モデルマウスに腫瘍を移植することで、新規の腫瘍免疫制御機構を解明することを目的とした。悪黒色腫細胞株B16F10をB6及び自己免疫疾患モデルであるB6/lprマウスに移植したところ、腫瘍重量に差は見られなかったが、B6/lprマウスの移植B16F10腫瘍組織中への(抗腫瘍)M1マクロファージの集積はB6マウスに比較し有意に低下していた。さらに、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子GM-CSF過剰発現B16F10(B16f10/mGM)を移植に用いた結果、移植B16F10/mGM の重量はB6マウスに比較しB6/lprマウスで有意に亢進した。また、M1マクロファージとM2マクロファージの比率M1/M2比はB6/lprマウスで有意に低下していた。さらに、腫瘍細胞と脾細胞を共培養すると、B6/lprマウスではB6マウスに比較してM1マクロファージへの分化が減弱していることが認められた。一方、脾細胞をGM-CSFを添加した培地を用いて培養した場合ではB6及びB6/lprマウス間にM1マクロファージへの分化に差は認められなかったことより、B6/lprマウスにおけるM1マクロファージの減少に重要な因子はGM-CSFだけでなく、それ以外の因子も関与することが示唆された。加えて、B16F10/mGM腫瘍組織中の血管数及び血管内皮増殖因子VEGFの発現量はB6マウスに比較しB6/lprマウスで有意に増加していた。B6/lprマウスにおける移植腫瘍組織中のVEGF発現の亢進は、腫瘍組織の低酸素状態及び転写因子HIF-1α発現の亢進に相関していた。また、移植腫瘍の大きさにB6及びB6/lprマウス間に差が出る以前の段階でも腫瘍血管新生はB6/lprマウスで亢進していることが確認された。以上のことから、自己免疫状態での抗腫瘍免疫の不全と血管新生の亢進が腫瘍増殖に影響を与えることが示され、自己免疫疾患患者では自己免疫状態をコントロールすることで、腫瘍の増殖や進展を抑制できる可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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