本研究は、生体内模倣培養環境を構築することで細胞の生体内類似応答が得られ、さらにそれを簡便かつ正確に評価できる神経毒性バイオアッセイデバイスの構築を目的とした。 1.生体内模倣培養環境の構築:神経系ECMの重要な働きを担うヘパラン硫酸に着目し、その一種であるヘパリンをコラーゲンに導入することでECM模倣ゲル基材を作製した。神経幹細胞を包埋し、bFGFを培地添加して培養を行ったところ、旺盛な細胞増殖および神経細胞分化を確認した。さらに汎用される二次元培養およびコラーゲンゲル包埋培養と比較して神経幹細胞の薬剤感受性が高まり、生体内挙動と同等となることが示唆された。これより、生体内模倣培養系の構築が期待された。 2.薄層ゲル培養系の有用性評価:細胞応答の簡便かつ正確な評価のために、ゲル包埋細胞をin situで評価できる培養系として、厚さ0.1mm程度の薄層ゲル培養系を構築した。神経モデル細胞の培養評価により、三次元的に伸長した突起長さを位相差観察で定量評価できた。また薄層ゲル包埋細胞の特異的マーカーを抗原抗体反応により直接検出したところ、細胞数に応じたシグナルを得られた。さらに免疫蛍光染色により、細胞の形態や分化シグナルを容易に観察可能であることを確認した。以上より、in situ評価における有効性を証明した。 3.バイオアッセイデバイスの構築:生体内模倣培養系を薄層ゲルにて作製することで、デバイスのプロトタイプを構築した。本デバイス内で神経幹細胞を培養後、シナプスマーカーの免疫蛍光染色を行うことで、シナプス結合と期待される多くの光点をin situで観察できた。またCa2+イメージングを用いたin situ live cell imagingにより、グルタミン酸添加による活動電位の発生が期待された。以上より、包埋細胞の神経特異的な機能をin situ評価できることが強く期待された。
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