研究実績の概要 |
前年度、超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisを用いた研究において、nucleosideのうちadenosine, guanosine, uridineを分解する経路 (ペントースビスリン酸経路) を解明し、その成果を学術雑誌Nature Chemical Biologyにて発表することが出来た。そこで今年度はまず、まだ不明であるcytidineの分解機構を明らかにしようと試みた。Cytidineを添加した条件において転写量が上昇した遺伝子のうち8遺伝子に着目し、これらの遺伝子とcytidine分解との関連性を検討するため、遺伝子破壊株の取得を試みた。その結果、8遺伝子のうち5遺伝子の破壊用プラスミドが構築でき、そのうち3遺伝子の破壊株を取得することができた。 またこれまでの研究において、4種のnucleoside 5’-monophosphate (NMP) のうちAMP, CMP, UMPを分解する経路を明らかにしていたが、GMPについてはどのように分解されるのか不明であった。そこでGMPがNMP phosphataseによる脱リン酸化によってguanosineへと変換された後、ペントースビスリン酸経路によって分解される可能性を考え、その検討を行うため、NMP phosphatase推定遺伝子を破壊した株の取得を試みた。その結果、目的遺伝子の破壊株を取得することが出来た。 さらに、ペントースビスリン酸経路の普遍性を検討するため、他のアーキアを対象にnucleoside分解に関わるkinaseの探索を試みた。その結果、超好熱性アーキアの一種であるArchaeoglobus fulgidusにおいて、nucleosideの一種であるinosineおよびguanosineをリン酸化するkinaseを同定することが出来た。さらにこのkinaseについて詳細な生化学的解析を行い、その酵素学的諸性質を明らかにした。この成果について、現在論文を執筆中であり、学術雑誌への投稿を予定している。
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