研究実績の概要 |
膵臓癌は多くの場合、Stage IVで発見されるため、早期膵臓癌マーカーの同定は最重要課題である。昨年度までにIGFBP2, 3を早期膵臓癌マーカー候補として絞り込んでいる。そこで、本年度の研究では、i)早期膵臓癌セット (健常者65例、Stage I/II膵臓癌患者38例)を用いたIGFBP2, 3の早期膵臓癌マーカーとしてのさらなる検証、ii)膵臓癌発症前検体の解析によるIGFBP2, 3の発症前診断への有効性の検証、iii)IGFBP2, 3の質的観点からのバイオマーカーとしての評価を行うことを目的とした。 早期膵臓癌セットの定量解析を行った結果、IGFBP2, 3は健常者に比べてStage I/II早期膵臓癌患者で有意に変動していた。これらのマーカーの膵臓癌患者に対する陽性率はCA19-9に比べても高く、有力な早期膵臓癌マーカーとして同定した。また、IGFBP2、3をCA19-9と組み合わせることで、CA19-9単独よりも効果的な早期膵臓癌の診断が可能になることが示された。 IGFBP2, 3の発症前検体の診断に対する有効性を検証するため、多目的コホート研究の追跡調査期間中に膵臓癌を発症した患者170例および対照340例の膵臓癌発症前検体の定量解析を行った。その結果、採血から膵臓癌の診断までの期間が短期間 (7年以内)の患者群は、対照群に比べてIGFBP2, 3値がそれぞれ高値、低値を示した。よってIGFBP2, 3は、発症前の検体に対する診断にも有効である可能性が示された。 量的な観点から有力な膵臓癌マーカーとして同定したIGFBP2, 3について、修飾や断片化を含めた質的変化のマーカーとしての有用性を検討した。健常者38例および早期膵臓癌患者23例について定量を行った結果、IGFBP3は、複合体量を分別定量することが早期膵臓癌の診断に有効である可能性が示された。
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