可視光を利用できる水分解光触媒のひとつである LaTiO2N を研究対象とし、エネルギー変換効率の高い電極の作製を目的とした。理想的な電極作製法は、光触媒膜を金属基板上へ直接作製することであると考え、LaTiO2N 膜を金属基板上へ直接作製することを試みた。 LaTiO2N は酸化物前駆体 La2Ti2O7 膜を窒化して合成されるので、酸化物前駆体を金属基板上へ直接作製することを目指した。従来法では作製が困難であった La2Ti2O7 膜を、水熱法を利用することで作製できることを明らかにした。さらに、La2Ti2O7膜を窒化することで LaTiO2N 膜を作製することに成功した。作製した LaTiO2N 膜について光電気化学測定を行った結果、LaTiO2N 膜が可視光照射下において n 型半導体として光触媒能を有することが明らかとなった。さらに、作製した LaTiO2N 膜の活性向上を目指し、光電気化学反応に用いる電解質溶液が光電流密度に与える影響を検討した。 窒化過程での高温加熱による窒素欠陥の生成を抑制するため、窒化過程を経ない酸窒化物膜の直接作製を目指した。その方法として、低温条件下で結晶性の窒化物膜の直接作製が可能である溶融塩電解法を選択した。溶融塩電解を行うための装置を立ち上げ、タンタル基板上へ窒化タンタル膜の作製を試みた。LiCl-KCl-Li3N 溶融塩中でタンタル基板をアノード分極し、3 h 反応させた。得られた生成膜について元素分析した結果、タンタルと酸素が検出され、窒素は検出されなかった。反応系内に水分などの酸素源が混入していると考えられるので、今後装置の改良が求められる。
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