常染色体劣性小脳変性症の複数の家系でTMEM16Kの変異が報告されているが、その分子に関しての研究はほとんど報告されていない。これまでにTMEM16Kの分子機能を解明する目的で、TMEM16Kノックアウトマウスや抗マウスTMEM16Kハムスターモノクローナル抗体を作製した。 TMEM16ファミリーに属する他の分子の多くはカルシウム依存的イオンチャネル活性やカルシウム依存的リン脂質スクランブル活性を有するため、TMEM16Kもカルシウム依存的に働く可能性があり、TMEM16Kとカルシウムの関係性を生化学的に解析している。また、モノクローナル抗体を用いてTMEM16Kの細胞内局在を検出したところ、TMEM16Kは主に小胞体膜上に発現しており、これまでの細胞膜上でイオンチャネルやリン脂質スクランブルといった分子活性が検出できない事と矛盾しない結果となった。現在のところ過剰発現細胞を用いた実験系では細胞内でのイオンチャネル活性やリン脂質スクランブル活性の検出には至っていない。 TMEM16Kノックアウトマウスは発生過程に異常は認めず、外見上明らかな表現型は認めていない。現在TMEM16Kノックアウトマウスにおいてヒトと同様に小脳変性の表現型を呈するか解析する目的で、行動解析にて小脳失調症状を、組織学的に神経変性所見を検索している。
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