研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、分子内に2つのイオン安定サイトを有するリング状のポリオキソメタレート分子(以降POMと記載)を用い、分子内の安定サイト間イオン移動を利用した新規物性の創出を目指す。これは電池やキャパシタへの応用を目的とした従来のリチウムイオンやプロトン等の軽元素イオン伝導体開発とは大きく異なり、多彩な機能発現が期待できる。申請者は結晶内の移動に寄与するイオンとして多価・磁性イオンなどの重元素イオンを選択し、磁場や電場を用いたイオン移動制御とそれに伴う特異な磁気、電気物性の発現を狙う。本研究の達成により、これまで注目されていなかった結晶空間内の「局所イオン移動」現象に伴う新たな物性創出やデバイス作製が可能になると考える。本年度は、テルビウムイオンを内包したプレイスラー型POMについて、局所イオン移動に伴う電気物性をより詳細に調査した。具体的には、分極の電場依存測定(P-E測定)や分極の温度依存測定(P-T測定)を行い評価した。P-E測定を200~330Kの温度領域で行ったところ、室温付近の温度でヒステリシスループを観測することに成功した。自発分極の値は290Kで極大となり、温度の低下と共に小さくなる様子も観測された。さらに0.55kV/cmの外部電場を印加しながら冷却した後昇温させながら焦電流測定を行ったところ、昇温速度に依存した焦電流ピークが観測された。得られた値を積分し、分極の温度依存性を見積もると、0.5K/minの掃引速度では280K付近で自発分極が消滅すること示唆された。一般的な強誘電体の自発分極は転移温度で必ず消失し、掃引温度による変化は観測されない。しかし、本系では掃引速度によって掃引速度によって分極の消失温度が変化したことから誘電ヒステリシスや焦電流は分極の緩和に由来していることが示唆される。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 2015 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 産業財産権 (2件)
Chem. Lett.
巻: 46 ページ: 602-604
Inorg. Chem.
巻: 56 ページ: 2042-2049
巻: 55 ページ: 8292-8300
物質・デバイス領域共同研究拠点 研究成果報告書
巻: -
巻: 43 号: 7 ページ: 1131-1133
10.1246/cl.140264
130004868264
Dalton Trans.
巻: 43 号: 34 ページ: 12974-12981
10.1039/c4dt01746c
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 53 号: 42 ページ: 11228-11231
10.1002/anie.201406223