新規分子モーターKIF21ファミリーは、これまでにⅠ型外眼筋線維症(CFEOMⅠ)や多発性硬化症などの神経難病に関与することが報告されているが、その分子メカニズムはほとんど不明であり、個体レベル及び細胞レベルにおける機能欠失モデルの作出と解析が必須である。 本研究ではこのKIF21ファミリーに焦点をあて、分子遺伝学的手法を用いて作成したノックアウトマウスを、その表現型を分子レベルから個体レベルを通して解析するが、この手法は高度に探索的であり、ノックアウトマウスの表現型については予想がつかないことが一般的である。しかし申請者ならびに他のグループのこれまでの結果から、結合タンパク質としてアクチン細胞骨格の制御因子が同定されており、KIF21ファミリーは、アクチン細胞骨格と微小管系細胞骨格を連携する制御を司る分子である可能性が高いと考えられた。 そこで本研究ではKIF21ファミリーの神経細胞の形態形成および機能維持における役割を、主にアクチン細胞骨格の制御に光をあて、細胞生物学ならびに分子遺伝学的手法から明らかにするため、ノックアウトマウスの細胞・組織・個体レベルを通した統合的・集学的な表現型解析を行い、この新規分子モーターがかかわる未知の分子機序の解明を目指した。その結果、ノックアウトマウスの行動解析で検出された表現型の根底にある分子機構に、このKIF21ファミリーが分子モーターとして深く関与していることが示唆された。
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