本研究の目的は、日本における教育情報の公開状況について調査し、教育情報の公開にはどのような意味があるのかについて経済学的視点から分析することにある。特に公立小中学校における学力を含めた教育に関する情報は教育政策の評価、学校の評価、親子の学校選択の際に重要であるが、これらの情報が広く共有されることの意義を考える。この目的を達成するために、研究計画の第1年度では、教育のアカウンタビリティの現状についてのアンケート調査を実施した。具体的には、全国の市区町村教育員会に対して、教育委員会の属性、教育情報の公開状況、学力情報などを尋ねるアンケート調査を配布した。また、市区町村の社会経済的情報を公的統計や民間企業の統計から収集し、アンケート調査と接合し、次年度以降の詳細な統計分析を進めるためのデータを構築した。アンケートの回収状況についての記述的分析からは以下のことが分かった。まず、都道府県レベルで集計したアンケート協力率と全国学力テストの平均学力との間には正の相関関係がみられた。また、自治体の人口規模もアンケートに回答するかどうかを決める重要な要素であることが分かった。実際に回答されたアンケートの記述的分析からは以下のことが分かった。自治体のアカウンタビリティへの取り組みの程度について、各自治体が全国に比べて「進んでいる」「やや進んでいる」と答えた割合は約1割であった。また、各自治体の学力が全国的に見て「非常に高い」「高い」と答えた割合は約2割であった。さらに、学力とアカウンタビリティの程度についてクロス集計し分析したところ、学力が高い自治体ほどアカウンタビリティの程度も高いという関係も見られた。
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