研究課題
特別研究員奨励費
我々は、パーキンソン病(PD)関連化学物質MPP+をヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞に低濃度曝露し、緩やかな細胞死の初期に起こる細胞内変化を観察することで、PD発症の本質的なメカニズムの解明を目指している。前年度までに、低濃度MPP+は、リソソーム内加水分解酵素の活性低下を介してオートファゴソーム分解を抑制すること、さらには、この現象が細胞死に関与していることを明らかにした。本年度は、低濃度MPP+(48時間曝露)に特有のオートファゴソーム分解抑制メカニズムの特定を目指して、従来からPDモデル細胞作製に汎用される高濃度MPP+(24時間曝露)がオートファジーに及ぼす影響との比較を行った。高濃度MPP+は、オートファゴソーム分解抑制に加えてその生成過程も阻害している可能性が示され、細胞内に蓄積したオートファゴソームの量は低濃度MPP+曝露時と比較すると少量であった。また、低濃度MPP+と異なり、高濃度MPP+は、細胞内リソソームの数自体を減少させ、リソソーム機能亢進物質(トレハロース及びラパマイシン)を前処理しても高濃度MPP+誘発オートファゴソーム蓄積及び細胞死の軽減は認められなかった。このことから、高濃度MPP+は過激なリソソームダメージを引き起こし、それは、短時間では修復が困難である可能性が考えられる。以上より、「リソソーム内加水分解酵素の弱い活性低下」は、低濃度MPP+毒性に特徴的であり、このような状態が持続的に引き起こされることがPD発症の根本的なメカニズムである可能性が考えられる。今後、リソソーム内加水分解酵素活性低下の詳細なメカニズムが明らかになれば、PDの新規治療標的同定に繋がることが期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: Epub ahead of print 号: 6 ページ: 1-4
10.1080/09168451.2016.1151338