研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、能楽における音の表象の問題を総合的に考察するものである。本年度は、昨年度までに行った世阿弥能に頻出する海辺の「松風」の表象の研究をより発展させるため、「風」あるいは「風流」をキーワードに「松風」の思想的背景を研究した。これにより、音楽性、身体性を孕む特異な自然の表象としての「松風」は、能楽あるいは世阿弥において単なる詩的モチーフであるにとどまらず、能楽の思想におけるパラダイムとなる表象と位置付けられることが明らかとなった。また、本年度は、上記のような文献学的な研究とともに、フィールドワークの実践や「糺勧進猿楽」(4月27日、京都・下鴨神社)「駿河シャクジ能」(11月20日、静岡・倭文神社)などの演能空間の祖型を探る特殊な演能プロジェクトをきっかけとして、能楽というパフォーマンスそれ自体が自然空間において演じられることを本来として形成された可能性について考究することができた。これらの成果を本年度中に論文として発表するには至らなかったが、次年度中に博士論文及びその他の論文においてその内容を総括し発表する予定である。なお、そのほか本研究に伴う成果として、国際パフォーマンス学会(7月 7日、オーストラリア、メルボルン大学)では現代アーティスト中谷芙二子の活動を論じた口頭発表「Nature’s Own Performance: Fujiko Nakaya’s Fog and Garden」を行った。また、2015~16年に山口情報芸術センターで開催された展覧会「プロミス・パーク・プロジェクト」、「プロミス・パーク」を総括するカタログ及び特設ウェブサイトのため、展覧会で発表した研究成果を総括する論考「パーク・アトラスに至る6章――世界のアーカイヴ空間としての公園を想起するために」と新論考「明治神宮小考――後ろでつなぎあわされた特異な二元的「公園」について」を執筆した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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観世
巻: 第84巻第5号
Performance Studies international Fluid States 2015 Tohoku, Japan Beyond Contamination: Corporeality, Spirituality, and Pilgrimage in Northern Japan Select: conference proceedings
巻: - ページ: 77-94