研究課題
特別研究員奨励費
多変数の正規分布の族から定まる統計多様体に対し、その一般的な測地線がP. S. Eriksen (1987) によって指数行列の部分行列を用いて構成されている。Calvo-Oller (1990) によって問題の統計多様体は対称空間である正定値対称行列の空間に等長に埋め込まれており、この空間の測地線は指数行列で与えられる。従ってEriksenの示した事実は明らかにこの埋め込みの様子が関係していると考えられる。しかし、問題の統計多様体と対称空間の間の関係は明確な形では述べられていない。本研究ではこの結果の背景として、対称空間の一つであるジーゲル上半空間を考え、この空間の幾何的構造からEriksenの結果を説明した。以下、本研究の結果を述べる。ジーゲル上半空間における境界成分への射影に対して、一点の逆像としてファイバー定めると、その虚部として問題の統計多様体が得られる。Eriksenの測地線の構成における指数行列から部分行列をとる操作も、同様な射影の制限として得られる。そしてこの指数行列はジーゲル上半空間のある部分対称領域の測地線のうち、射影に対して水平的なものとして特徴付けられるものである。Eriksenの結果を本質的に応用する形で、上の部分対称領域の射影の像がファイバーに一致することを示す。また、Eriksenの結果そのものはこの部分対称領域の測地線が有する大域的な性質として言い換えられる。つまり部分対称領域の測地線が一点で射影に対し水平的な接ベクトルを持てば、この測地線の接ベクトルは至る所水平的となる。このようにして、ジーゲル上半空間の部分対称領域を調べることの過程として、Eriksenの結果を説明することができた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
Geometric Science of Information, Proceedings of GSI2015
巻: LNCS9389 ページ: 605-614
10.1007/978-3-319-25040-3_65