研究課題
特別研究員奨励費
トキソプラズマ原虫は宿主との境界である寄生胞膜を、潜伏感染期特異的にさらに嚢虫壁(シスト壁)と呼ばれる構造体で裏打ちして宿主と隔てられる。本年度の研究では潜伏感染時に宿主との相互作用を変化させる要因として原虫の形成するシスト壁に注目し、この形成を調節する原虫因子の同定および制御機序の解析を行った。cAMPシグナルがシスト壁形成において両方向の制御を担っていることが既報で示唆されており、本研究ではProtein Kinase A (PKA)ファミリーのうち、Toxoplasma gondii PKA catalytic subunit 3 (TgPKAc3)がシスト壁形成の抑制方向のシグナルを制御していることを明らかにした。TgPKAc3がどのようにシスト壁形成を制御しているかを明らかにするために、免疫沈降法にて相互作用因子の同定を行った。ヒットしたタンパク質の中で、典型的なPKA基質配列を持った遺伝子を絞り込んだところ、Glycogen Phosphorylase と相同なタンパク質(TgGP1)が見つかったため、この因子の解析を進めた。TgGP1ノックアウト原虫およびリン酸化されないTgGP1S25Aでは原虫細胞はAmylopectinを過剰に貯留し、TgGP1遺伝子が機能的であることおよびリン酸化位置が重要な役割を担っていることが明らかになった。リン酸化状態であるTgGP1S25Eでは野生型原虫細胞が Amylopectinを貯留する潜伏感染期においてもAmylopectin貯留が非常に少ないことがわかった。潜伏感染に至った原虫は厚いシスト壁を形成してしまい、宿主からのエネルギー獲得に不利益が生じると考えられる。TgPKAc3によるTgGP1の制御はシスト壁の生成とアミロペクチンとしてのエネルギー貯蔵が調和を持って制御されている仕組みの一つであると示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2016 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件)
International Journal for Parasitology: Drugs and Drug Resistance
巻: 5 号: 1 ページ: 1-8
10.1016/j.ijpddr.2014.12.001
Analytical Biochemistry
巻: 464 ページ: 9-14
10.1016/j.ab.2014.06.018