研究実績の概要 |
2015年度は, ゲージ不変性を持たない羃乗型の非線型項を伴った半相対論方程式の初期値問題の時間局所的な可解性に関する研究を行った. 保存則を持たずゲージ不変性も無い半相対論的方程式は, 保存則を持つ方程式に比べて初期値問題の可解性が悪化する事が, シュレディンガー方程式やクライン・ゴルドン方程式の研究から類推される. ゲージ不変性を持たないシュレディンガー方程式では, 優臨界尺度に於ける初期データに対して解が存在しない事が, 熱方程式の研究に由来する適当な試験関数列に対する弱方程式の矛盾を指摘する事で証明されている. これに対して, 半相対論的方程式は非局所的な作用素である分数階微分の為に, 熱方程式に由来する試験関数を用いて, 弱方程式の矛盾を指摘する事は出来ない. 本研究では, 半相対論的方程式を変形し, 分数階微分を方程式から分離し, 独自に移流方程式の考察から考案した試験関数列に注目する事で, 原点に特異性を有する初期値に対応する弱解が存在しない事を示した. 空間一次元に於いては, 特異性を持つ関数は 1/2 階よりも高階のソボレフ空間には存在しないので, 本研究によって空間一次元に於いては1/2 階のソボレフ空間が非線型効果を加味しない場合の冪乗型の非線型項を伴う半相対論的方程式の適切性を与える初期値の境界となっており, 半相対論的発展作用素の平滑化効果が一次元に於いては本質的に乏しい事を示した. 特に, 分数階微分を除去する様に変形した半相対論的方程式に於ても, 熱方程式に由来する試験関数列を適用する事は出来ず, 移流方程式の研究から独自に考案した試験関数列を応用する事で, 既存の手法では扱う事が出来なかった, 劣臨界尺度に於ける時間局所可解性を否定した.
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