研究実績の概要 |
本年度は主として、(1)カチオン性ロジウム触媒を用いた[2+2+2]付加環化反応によるベンゾピセン骨格を有する[9]ヘリセンの不斉合成と円偏光発光特性の評価と(2)窒素原子を対称的に複数個有するアザヘリセンの合成の検討を行った。(1)に関しては、まず前年度に合成した[9]ヘリセンのフルオレノン部位をスピロフルオレンへと誘導することを検討した。その結果、オルトブロモビフェニルをリチオ化しカルボニル基に求核攻撃させることで、鏡像体過剰率を低下させることなくスピロフルオレン骨格を有する[9]ヘリセンが得られた。本ヘリセンの円偏光発光スペクトルを測定したところ、ピークトップが二つありトリフェニレン骨格を有する[7]ヘリセンに比べ、円偏光発光特性を示すg値が低下することが明らかになった。これはネガティブな結果ではあるものの、円偏光発光特性と構造の相関に関する重要な知見が得られた。続いて、ヘテロ原子が円偏光発光特性に与える影響を明らかにするため、ベンゾピセン骨格を有するヘテロ[9]ヘリセンの不斉合成を検討した。その結果、リン架橋1,4-ジインを用いることでホスファ[9]ヘリセンが低収率ながら良好なエナンチオ選択性で得られた。 (2)窒素原子を対称的に複数個有するアザヘリセンは、ヘリセンのばね定数を測定するために金に配位すると考えられるため合成の検討を行った。まず部分骨格であるジアザトリフェニレン誘導体を合成するために、3,3’-ビピリジル架橋1,7-ジインとアルキンとの[2+2+2]付加環化反応を検討することとした。その結果、カチオン性ロジウム触媒存在下、80 ℃で反応が進行し低収率ながら目的のジアザトリフェニレンが得られた。続いて、3,3’-ビピリジル架橋テトラインを合成して[2+2+2]付加環化反応を検討したが、目的のビス(ジアザトリフェニレン)骨格を有するヘリセンは得られなかった。
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