研究課題
特別研究員奨励費
東京都老人総合研究所、順天堂および東邦大学呼吸器内科、㈱カゴメ、医療法人社団同友会春日クリニックの協力を得て行われた、血中の抗酸化物質と呼吸器疾患の関係について検証した臨床研究はCrin Respir J.(2015)でその成果を発表した。慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(BA)および両疾患のオーバーラップ症候群(ACOS)の患者を対象にした今回の研究では、肺疾患の病歴なしの対象群に対して、COPD群で血中ビタミンC(VC)濃度の有意な低下が認められた。さらに酸化ストレスの亢進を意味する、総VCに対する酸化型のVCの割合も対象群に対してCOPD群で高い値を示した。一方、BA群とACOS群では対象群との有意な差は認められなかった。血中のリコピン濃度やGSHなどの他の抗酸化物質の測定項目もVCと同様の結果が得られたことから、COPDは喫煙等による慢性的な酸化ストレスによって体内のレドックスバランスが崩壊していることが示唆された。一方、BAおよびACOSに関しては抗酸化物質の不足とは別の原因でそれらの病態が進行している可能性も示唆された。これまで、日本人における呼吸器疾患患者を対象に体内の抗酸化栄養素の過不足を調べた研究は乏しく、さらに検体の平均年齢が55歳以上と高齢者を対象にした今回の研究結果は、呼吸器疾患患者の予測や治療方針の選択に多いに役立つものと考えられる。㈱ニチレイフーズとの共同研究では、高齢期からのVC投与が骨粗鬆症およびサルコペニア発症の予防に効果を示すか野生型マウスを用いて検討した。20ヵ月齢から4ヶ月間ビタミンC投与を行ったが、筋組織中のVC濃度の有意な上昇は認められなかった。VC投与群で暗期の自発行動量の上昇は見られたが、筋重量およびその筋繊維タイプの変化、また骨密度等の測定項目に有意な差は認められなかった。今回、対象群の加齢変化が認められなかったため、VC投与の影響を検討することができなかった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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