研究課題
特別研究員奨励費
平成27年度は、博士論文の執筆およびディフェンスを行い、博士(科学)の学位を取得するとともに、神経回路での学習および計算における確率的プロセスの重要性について研究を進めた。第一に、昨年度から引き続き、結合可塑性の機能的意味について理論的研究を行った。従来、脳での学習を担うシナプス可塑性は、主にシナプス後ニューロンのスパインの大きさ・組成の変化により起こると考えられていたが、近年、スパイン自体の除去・および生成も頻繁に起こることが明らかになった。そこで、本研究ではスパインの生成・除去により実現される結合可塑性が、どのようにしてシナプス可塑性と協調的に学習をおよび情報処理を担うのかを考察した。その結果、ヘッブ型の結合可塑性を用いることで、従来提案されていたカットオフ型の結合可塑性よりも、入力ニューロン群における多様性に対してロバストな推定が可能になることが分かった。この結果は、確率的な結合可塑性の、決定論的な可塑性に対する優位性を示唆する。また、シナプスの不確定性と結合確率の実験値をモデルと比較した結果、実際のシナプスにおいても、結合可能性が情報表現において重要な役割を果たすべきことが示された。また、最近の実験研究において、大脳皮質の局所神経回路において、ニューロン同士の結合の多くは複数のシナプスによって担われていることが明らかになった。例えば、マウスのバレル皮質において、ニューロン間結合の平均シナプス数は10個程度であると推定されている。一方で、なぜシナプス結合にこのような冗長性が存在するのかは依然明らかになっていない。そこで次に、樹状突起を持つニューロンのモデルを用いて、冗長なシナプス結合の機能的意味の解明を行った。その結果、シナプス結合の冗長性を利用することで、入出力に対してベイジアンの意味で最適な学習を実装できることを明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS Computational Biology
巻: 11(4) 号: 4 ページ: e1004227-e1004227
10.1371/journal.pcbi.1004227
PLOS ONE
巻: 9(7) 号: 7 ページ: 1-16
10.1371/journal.pone.0101535