研究実績の概要 |
当研究室においてカラー細胞系譜追跡法を用いて,tamoxifen投与にてランダムに食道上皮を3色の蛍光標識が可能となり, 長期経過観察にて食道上皮に単色のパッチ上の領域を確認し, その領域の境界は明瞭であった. その単色の領域は1個の幹細胞由来の細胞のみで構成されており, 1個の幹細胞が存在する事が考えられた. 〈Sox2〉食道上皮細胞基底細胞付近に広くSox2陽性細胞が存在している事を確認した.当講座においてin vitro解析でのorganoid形成が食道上皮において可能であった. そこでSx2-GFP miceを用いて解析を行い,Sox2陽性細胞と陰性細胞にFACSを用いて分離するとSox2陽性細胞のみからorganoid形成を認めた.またSox2のCre knock-in miceにおいてSox2陽性細胞の細胞系譜追跡を行い,12weeksにおいても単色の細胞領域を認め,Sox2陽性細胞内にin vitroでもin vivoにおいても長期に食道上皮を維持する幹細胞を含む事を確認した.そこでSox2-GFP single cell RNA-seqの解析においてHopx,Lrig1,HopxがSox2に共発現している事を確認し,その他各発現遺伝子の相互関係等詳細な検討は現在も解析中である. またBmi1 probeを用いたin situ hybridizationにおいてBmi1陽性細胞が食道基底細胞付近に存在する事が示唆された事より基底細胞付近のSox2陽性細胞及びBmi1-GFP miceを用いたBmi1陽性細胞との関係の差異を示す事でheterogeneityの存在を示す手がかりとなると考え, Sox2-GFP vs Bmi1-GFP highとBmi1-GFP high vs Bmi1-GFP lowにてqPCRを用いた各幹細胞マーカーやケラチン等の分化マーカー等の解析を細胞の分離からRNA抽出・cDNA作成を経由して現在解析中である. 〈Bmi1〉Bmi1のin situ hybridization/ single molecular FISHを行い食道上皮の基底細胞付近に集積を確認した. そこでBmi1Cre knock-in miceを用いてBmi1creER/+/Rosa26rbw/+ mice にtamoxifen投与後の細胞系譜追跡を施行し長期間のlineage tracingを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点においては食道上皮幹細胞の維持機構や特異的な幹細胞の同定は確立されたものがなく,多色細胞系譜追跡を用いる事で1個の幹細胞由来の領域をスクリーニングする事が可能となった.幸いにもSox2及びBmi1といった標的のなる分子マーカーの同定には至った.また現時点でそれぞれの幹細胞候補のマーカーよりlineage tracingも確認できており, 幹細胞を含む事が強く示唆された.しかし, この分子マーカーの由来や関係性に特別なものはなく,2者の関係性を見出す事も今後の課題と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
Sox2陽性細胞及びBmi1-GFP miceを用いたBmi1陽性細胞との関係の差異を示す事でheterogeneityの存在を示す手がかりとなると考え, Sox2-GFP vs Bmi1-GFP highとBmi1-GFP high vs Bmi1-GFP lowにてqPCRを用いた各幹細胞マーカーやケラチン等の分化マーカー等の解析を細胞の分離からRNA抽出・cDNA作成を経由して解析の予定である. また今後C57BL/6, Bmi1creER/+/Rosa26rbw/+ miceにおいてirradiation傷害モデルの検討にて傷害モデルにおけるBmi1陽性細胞の動向の検討やBmi1creER/+/Rosa26rbw/+ mice tamoxifen投与後2日目の1個のBmi1陽性細胞とその他マーカー:Keratin14, Keratin5, EdUとdouble stainingの検討などBmi1陽性細胞の特徴に関しての詳細な検討を必要とする. またBmi1は様々な臓器で幹細胞マーカーとして報告があり,引き続きHopxCreERT2,Lrig1creERT2 miceを用いても新たなマーカーとの関係も検討が必要と考えており,マウス購入の上実験計画を立て進めている最中である.さらに今後癌化モデルの解析も検討して計画する方針である.
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