研究実績の概要 |
本研究では導電性高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)の電気伝導機構の解明を目的としている.本年度は昨年度見出した2次元的な電子状態を反映した磁気抵抗効果の起源について,微小角入射広角X線散乱(GIWAXS)測定や走査型トンネル顕微鏡(STM)観察を用いることで,固体構造の視点からの解明を試みた. GIWAXS測定では4nm程度の周期性を有する構造由来の散乱ピークが観測された.その起源としては,扁平楕円体型のPEDOT/PSSのコアシェル構造が短軸を基板に垂直に向けて非周期的に積層したものが考えられる.こうして推測した構造をSTM測定により検証したところ,膜断面のSTM像では実際にコアシェル構造が積層する様子が確認された.また,膜際表面のSTM測定では,コアシェル構造が連なっている様子が観測された.このような構造情報と磁気抵抗効果の結果を併せると, PEDOTナノ結晶の伝導層がPSSシェルによって上下を挟み込まれた状態にあることで,低温で位相緩和長が長くなった際に,シェルによる散乱の影響が顕在化し,2次元的な磁気抵抗効果が観測されたと考えられる.これらの電気伝導の律速となっているキャリアドーピングに寄与しないPSS層を除去することにより,現状では数nm程度である位相緩和長を伸ばし,高電気伝導化を実現することが可能となる.
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