研究課題
特別研究員奨励費
前年度に引き続き成人T細胞白血病(ATL)におけるエピゲノム異常の包括的な解析を行った。昨年度に行ったEZH2依存的なヒストン修飾であるH3K27me3の解析に加え、本年度は転写の活性化に寄与するヒストン修飾H3K4me3のゲノムワイドな分布に注目し、正常T細胞とATL細胞の差異、H3K27me3とH3K4me3の変化について統合解析を行った。H3K4me3の変化は、H3K27me3と比べると箇所が少なく、全体はATLにおいて減少傾向であった。メチル化の統合解析の結果、正常T細胞において低H3K27me3、高H3K4me3である遺伝子領域がATLにおいて高H3K27me3、低H3K4me3となっていることがわかった。この結果は転写抑制性のH3K27me3の増加と、転写活性性のH3K4me3の減少が協調して起こることを示しており、ゲノムワイドなエピゲノムの変化が遺伝子発現を抑制する方向へと傾くことが示唆された。一方で個々の遺伝子に注目すると、H3K4me3の大幅な増加を伴う発現上昇を示す遺伝子も多数見られた。この結果から、それぞれの遺伝子領域に特有のcisに作用する制御メカニズムの重要性が示唆された。②昨年度に明らかにした、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染細胞におけるH3K27me3の増加についてより詳細に検討を行った。HTLV-1感染者末梢血由来のCD4陽性T細胞を、HTLV-1感染細胞と非感染細胞に分離し、ATLにおいて異常なH3K27me3の蓄積が見られる遺伝子プロモーターのH3K27me3の蓄積レベルを比較した。その結果、HTLV-1感染細胞において非感染細胞よりも高いH3K27me3の蓄積が起こっていることが明らかとなり、ATLを発症する前のHTLV-1感染細胞においてもATL様なエピジェネティックな変化が存在することが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Blood
巻: 127 号: 14 ページ: 1790-1802
10.1182/blood-2015-08-662593