研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、まず、細胞系譜追跡実験により、小脳オリゴデンドロサイトの多くは、小脳原基からではなく、小脳の外部を起源とすることがわかった。さらに、小脳オリゴデンドロサイトの起源の詳細を検討すると、小脳オリゴデンドロサイトは、尾側中脳腹側Olig2発現領域から産生されることが示唆された。Sox9 (SRY-box 9)は、多分化能を有する多くの組織幹細胞で発現していることが知られている転写因子であり、網膜・皮膚・腎臓などの臓器の形成において、細胞増殖や分化を制御する機能を果たすことが報告されている。そこで、本研究では、小脳をモデル系とし、小脳(および中脳)特異的にSox9遺伝子を欠失させたSox9 CKOマウスを新規に作製・解析することで、異なる細胞種の生み出しがどのような分子機構により制御されているのかという問題にアプローチした。En1-Cre KIマウスを用いた小脳・中脳特異的Sox9 CKOマウスは出生直後致死であった。そこで、出生直前の胎生18日目の小脳組織を詳細に調べたところ、Sox9 CKOマウスでは、神経細胞やアストロサイトが正常に発生する一方で、オリゴデンドロサイトが完全に消失していた。発生段階をさかのぼって調べると、Sox9 CKOマウスでは、数は少ないもののオリゴデンドロサイト前駆体が生み出され、その後のオリゴデンドロサイトへの分化段階で、突起形成やミエリン形成に異常をきたし、最終的にはアポトーシスを起こしてしまうことがわかった。さらに、中脳組織からNeurosphereを調整し、オリゴデンドロサイトへの分化誘導実験を行ったところ、in vivo同様に、Sox9を欠失したオリゴデンドロサイトでは、突起形成などに著しい形態異常が観察された。以上の結果から、Sox9は小脳のオリゴデンドロサイトの分化・成熟・生存に関与していることが明らかになった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell Reports
巻: 9 号: 6 ページ: 2166-2179
10.1016/j.celrep.2014.11.045