研究実績の概要 |
高性能な断熱材や熱電変換素子の実現のためには熱伝導率の低減が必要不可欠であり,ナノテクノロジーを駆使して実現されつつある.本年度はナノ構造を用いた熱伝導率低減のメカニズムを明らかにするためにエピタキシャルSiナノ構造体(SiNC)[1]とエピタキシャルSi/Geナノドット(Si/GeNDs)構造体[2]の熱伝導率測定を行い,数値計算を用いてそれらの熱伝導率を評価した.エピタキシャルSiナノ構造体(SiNC)は数nmサイズのSi粒子とその表面を覆う極薄のSi酸化膜によって構成され,1 W/mK以下という低熱伝導率を有する[1].しかしながら,SiNCがアモルファスSi(2 W/mK)よりも低い熱伝導率を持つメカニズムには不明な点が多い.そこで本年度の研究では自作のレーザー測定装置を用いてSiNCの熱伝導率を測定した.数値計算を用いて粒径3 nmのSiNCの熱伝導率を解析すると,熱キャリアの緩和時間がCahill-Pohlの最小熱伝導率と一致し,熱キャリアが伝播せずに独立振動子として実行的に振る舞っていると示された.続いて,SiNCにGeナノドットを埋め込んだエピタキシャルSi/Geナノドット(Si/GeNDs)構造はSiNCと同様に低熱伝導率を持つと報告されているが[2],その構造体による熱伝導低減のメカニズムには不明な点が多い.そこで上述のSiNCと同様にSi/GeNDs構造体の熱伝導率を測定し,数値計算手法を用いてSi/GeNDs構造体の熱伝導率低減を評価した.その結果,酸化膜による界面散乱とGe粒子散乱の組み合わせによって効率的に熱伝導率低減が可能であると明らかになった. 1 Y. Nakamura, et al., Nano Energy 12, 845 (2015). 2 S. Yamasaka, et al., Sci. Rep. 5, (2015).
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