研究課題
特別研究員奨励費
1.アツギケカビ目の基準種であるEndogone pisiformis と同定された標本には、形態的に異なる近縁種が存在することが示唆された。複数遺伝子の系統解析を実施した結果、近縁種はE. pisiformis の姉妹系統に位置する新種と判明した。そこで、本種をE. corticioidesとして国際誌上で新種記載した。本論文は、アツギケカビ目菌類の詳細な分類に、形態分類に加え、分子系統学的手法も取り入れる必要性を示した。2.昨年度得られたブナ科樹木にアツギケカビ目が形成し外生菌根について、形態記載および当菌類の系統学的位置付けを明らかにし、国際誌上で論文として発表した。本論文は、アツギケカビ目の外生菌根形成を、形態観察および分子同定の両手法に基づき証明した初めての報告となった。3.昨年度、原始的な苔類であるコマチゴケ属には、ケカビ亜門の複数系統とグロムス亜門が菌根様構造を形成していることを分子同定に基づき明らかにした。今年度は、分子同定された各菌類系統について、系統間での菌根様構造の差異を調査した。その結果、ケカビ亜門に属するアツギケカビ目とSphaerocreas-Densospora 系統という二つの目レベルで異なる系統が、異なる菌根様構造を形成していることが判明した。4.祖先的苔類であるコマチゴケ綱のヒメトロイブゴケ属に菌根様構造を形成する菌類は全く解明されていない。そこで、山梨県内の亜高山帯において採集されたヒメトロイブゴケの配偶体を対象として、菌根様構造の観察と菌類の分子同定を行った。その結果、菌根様構造の形成が確認され、その構造はトロイブゴケ属に形成される構造と類似していた。分子同定の結果、共生菌はE. corticioides と同定された。これは、ケカビ亜門の既知種と苔類との間における菌根様構造の形成を明らかにした初の事例となった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Mycoscience
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Mycorrhiza
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