研究課題
特別研究員奨励費
地球表層を移動する海洋プレートが陸側のプレートに衝突し、マントルへと沈み込む場(沈み込み帯)では、ハロゲンや希ガス、水、二酸化炭素などに代表される揮発性物質が、沈み込むプレートに取り込まれてマントルへ運ばれている。本研究では、揮発性物質が地球表層から地球内部へと沈み込む過程、沈み込みがマントルの揮発性物質の組成に及ぼす影響について、沈み込む揮発性物質の最も良いトレーサーと考えられるハロゲンと希ガスを用いて解明することを目的としている。研究対象としては、マントル中の揮発性物質について1次的な情報を最もよく保存していると考えられるマントル捕獲岩を扱う。今年度は、プレート内で産出した試料のハロゲン分析、プレート内と背弧側で産出した試料の微量元素分析を行った。プレート内の試料は、MORB(中央海嶺玄武岩)源マントル的な組成を起点に2種の傾向を示した。微量元素組成もハロゲン組成と対応し、研究対象としたマントル捕獲岩は、現在はハロゲン組成が変動しているが、元々はMORB源マントル的な組成を持っていたことを示唆する。研究対象とした地域では、10億年以上前に大陸化のマントルがマントル対流から分離したことが示唆されており、対流するマントルのハロゲン組成が少なくとも16億年間一定で、沈み込み帯でみられたヨウ素に富むハロゲンの沈み込みの影響がマントル全体に強く及んでいないことを示唆している。昨年度までに行った背弧側の試料のハロゲン分析結果から、背弧側では3種のハロゲンが混在していることがわかった。背弧側の試料の微量元素組成や同位体組成は、ハロゲン組成とよく対応しており、それらがマントルに元々存在していた成分と2種の起源が異なる沈み込んだ成分であることが示唆された。火山フロントと異なり、マントルに元々存在していた成分がみられたことは、沈み込みが及ぼす影響が火山フロントよりも小さいことを示唆する。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件)
Earth and Planetary Science Letters
巻: 457 ページ: 106-116
10.1016/j.epsl.2016.10.012
地学雑誌
巻: 124 号: 3 ページ: 445-471
10.5026/jgeography.124.445
130005087133