Ezrin、Radixin、Moesinの神経細胞の形態形成・極性獲得における役割を明らかにすることを目的とした。これまでそれぞれのノックダウン・ノックアウトマウスであるEzrin knockdown(EKD)、Radixin knockout(RKO)、Moesin knockout(MKO)マウスを用いた解析を行い、それぞれのマウス胎仔から調製した初代培養大脳皮質神経細胞における形態および極性異常を見出していた。 1. Ezrin、Radixin、MoesinとRhoファミリーとの関連性についての解析:Rhotekin結合ドメインおよびPAK結合ドメインが結合したビーズを用いたプルダウンアッセイおよびウエスタンブロッティングを行ったところ、EKD神経細胞においてはRhoA活性の顕著な亢進(約3倍)が見出された。Rac1およびCdc42の活性について変化は見られなかった。一方でRKOおよびMKO神経細胞においてはRhoA、Rac1、Cdc42いずれについても変化は見られなかった。以上の結果から、Rhoファミリーの活性制御に対するEzrin、Radixin、Moesinの役割は異なるということが明らかになった。 2. EKD神経細胞におけるRhoAシグナル伝達系の解析:EKD神経細胞においては神経細胞の発達初期で神経突起が形成されるときに重要とされているmyosin IIの構成サブユニットであるmyosin light chain 2(MLC2)のリン酸化が亢進していることが明らかになった。 本研究から、神経細胞の極性獲得におけるEzrin、Radixin、Moesinの役割は異なっており、とりわけEzrinについてはRhoAシグナル伝達系を抑制するという個別の機能があることを明らかにすることができた。
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