研究実績の概要 |
論文Huang, Masuda, Okano and Saijo (2015)についての進展を記す。同論文では、単純な公共財環境において、動機に多様性がある集団のただ乗りをどのように防ぐかを検討している。27年度は、従来のように利己的プレイヤーのほか、協力的行動を示したときに限り自分も協力的行動を取る、いわゆる条件付き協力プレイヤーが混在するモデルの分析を進めた。まずストラテジー・メソッドを用いた追加の被験者実験を実施したことで、被験者の動機分析方法を以前のものより洗練することができた。これにより、条件付き協力プレイヤーが一定割合いることを再確認し、更には2種類のプレイヤーがお互いに相手の行動原理を誤認していることを突き止めた。そして、この観察に基づき、相手のタイプがわからない状況では、利己的プレイヤーが条件付き協力プレイヤーの数を課題に見積もることで、協力率が時間とともに上昇するという理論結果を導いた。この上昇傾向は実験結果と整合的である。同論文は、国際査読付き雑誌から改訂を要求されており、これに応じるために27年度は追加の被験者実験を実施した。現在この結果を分析しており、近日中に再投稿をする予定である。また、27年度は、第25回日本数理生物学会年会兼第5回日中韓数理生物学コロキウムの企画セッション「社会的ジレンマ」においてHuang, Masuda, Okano and Saijo (2015)を口頭報告し、数理生物学者と議論できた。また、本研究と密接に関連するMasuda, Okano and Saijo (2014)の日本語解説版として、フロンティア実験社会科学シリーズ第2巻「人間行動と市場デザイン」第7章『複数の行動原理に対して頑健な公共財供給メカニズム』を勁草書房から平成28年中に刊行予定である。
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