研究実績の概要 |
昨年度までに構築・検証された,流体構造連成解析手法とシステム同定を組み合わせたフラッター解析手法を用いて,遷音速ファンのフラッター発生点予測を試みた.その結果,ファンの回転数が高い場合には,数値解析により発生点が的確に捉えられた.しかし,フラッターが起こらない低い回転数でも数値解析ではフラッターが発生した.このミスマッチの原因について流れ場や翼振動の増幅に寄与する流れ構造をもとに考察した結果,前縁付近に位置する離脱衝撃波が主な励振力となること,衝撃波足元の流れ場の安定性は乱流モデルの実装に非常に敏感であり,衝撃波バフェットが生じる可能性があることがわかった.さらなる予測精度の改善には,現実の作動状態における流れ場の詳細な理解が必要だと結論づけた. 実用的なファン翼列の振動予測で見出された課題に対し,以下の①②の異なる視点から,振動現象理解と予測精度の改善につなげるための研究を実施した. ①翼固有振動数のばらつきが翼振動の安定性に与える影響(ミスチューニングによるフラッター抑制効果)をモンテカルロ法により定量化した.結果として,通常の製造公差で生じる程度のばらつきではフラッター発生点はほとんど影響を受けないことがわかり,前述のミスマッチは構造特性由来ではなく前縁剥離・離脱衝撃波の共存する遷音速乱流流れ場の解析精度などの,CFDに由来する可能性が高いと考察した. ②フラッター発生点まわりにおける遷音速乱流流れ場の理解にむけて,最適化コンパクト差分・人工粘性・重合格子・壁関数を組み合わせた圧縮性乱流解析コードを構築した.チャネル乱流(Re:180~5200),カルマン渦列(Re=3900),層流剥離遷移の生じる静翼翼列流れを対象とした検証を実施し,本コードで正しく乱流を解析するための指針を獲得できた.また,カルマン渦列について,遷音速の条件(マッハ0.75)でも安定な計算が実現できた.
|