研究実績の概要 |
本研究は、過度に完全性を追い求める完全主義者が、どのようにして特異な判断や行動を行い、その結果として不適応に陥ってしまうのかを実証的に検討することを目的とするものである。本研究では、「外界からの情報の抽出 (失敗に対する選択的注意)」と「抽出された情報の解釈 (過度に高い目標設定・二分法的思考)」という2つの認知プロセスにおいて、完全主義者が特異な認知スタイルを持っているという仮説モデルを提案している。これらの完全主義者に特異な認知プロセスを2つの課程に弁別して検討する。
平成28年度においては、選択的注意バイアスを定位過程と解放過程に弁別して測定した上で、完全主義との関連を、性差も含めて検討した。具体的には、成功関連語や失敗関連語に対する選択的注意を、認知行動実験パラダイムである修正ドット・プローブ課題 (Rudaizky et al., 2014)を用いて定位バイアス・解放困難バイアスに弁別して測定し、質問紙 (MSPS, 桜井・大谷, 1997; MPCI, 小堀・丹野, 2004; MPS, 大谷・桜井, 1995)によって測定した完全主義パーソナリティとの関連を検討した。
その結果、男性でのみ成功関連語に対する定位バイアスや失敗関連語に対する解放困難バイアスを有することが明らかになった。そのため、これまでドット・プローブ課題で見られていた成功や失敗に対する選択的注意バイアスは、それぞれ異なる過程におけるバイアスであることが明らかになった。
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