研究課題
特別研究員奨励費
申請者らはこれまでにメトホルミンがニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の細胞内量の減少を介して抗腫瘍効果を発揮する新規作用機序を発見した。今年度には、NADと細胞増殖抑制との関連に関して主にNAD依存細胞内酵素であるSIRTファミリーとPARPに関して検討を行った。メトホルミン感受性株及び非感受性株の間でSIRT及びPARPの発現量を比較したところ違いは認められなかった。また細胞内poly(ADP)ribosyl化タンパク量及びアセチル化タンパク量の違いの確認にも至らなかった。これらの結果からメトホルミンはNAD依存的にSIRT,PARPを介さない作用機序を持つ可能性が示唆された。申請者らはまた、犬乳腺腫瘍以外の犬悪性腫瘍に対するメトホルミンの有用性を28の犬腫瘍細胞株パネルを用いて検討した。その結果犬悪性黒色腫の一部がメトホルミンに対して高い感受性を持つ可能性が示唆され、移植モデルにおいてもメトホルミンは悪性黒色腫原発巣の成長を抑制する傾向を示した。このように申請者らは今年度までに、メトホルミンの犬悪性腫瘍に対する抗腫瘍効果を明らかにし、またNADを介する新たな作用機序を発見した。またメトホルミンが犬の他の悪性腫瘍に対しても抗腫瘍効果を持つ可能性を示した。これらの結果の一部は今年度The Veterinary JournalのOncology Special Issueに連続した二報として掲載され、一報は雑誌の年間アワードであるAndrew Higgin's Prizeを受賞した。申請者らが実施した研究は、未だに治療困難な疾患である犬の悪性乳腺腫瘍に対して、副作用の少なく効果的な新たな治療方法を提案するものであり、その社会的な意義は高く評価されたと考える。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Veterinary Journal
巻: 205 号: 2 ページ: 288-296
10.1016/j.tvjl.2015.04.025
巻: 205 号: 2 ページ: 297-304
10.1016/j.tvjl.2015.04.026