研究実績の概要 |
フェノール類の酸化的脱芳香型酸化反応は生理活性物質の製造において非常に有用性が高い。これまでにこの反応には、猛毒重金属酸化剤や遷移金属触媒が用いられた。最近ではそれらの代替元素として超原子価ヨウ素が用いられるようになってきている。環境調和型の酸化剤として注目を集めている超原子価ヨウ素は1世紀以上の歴史を持つ。しかし、これまでのキラル超原子価ヨウ素を用いる不斉酸化反応の多くは、そのエナンチオ選択性が中程度にとどまっている。さらに、キラル超原子価ヨウ素を触媒的に用いる不斉酸化反応の例は数例に限られているため、その開発が強く求められている。26年度の研究計画として、デザイン型超原子価ヨウ素触媒を用いる高エナンチオ選択的酸化的カップリング反応の開発を挙げていた。熱心な研究努力の結果、期待以上の優れた成果を得た。具体的には以下の3つである。①光学活性第四級アンモニウムヨージドと実用性が高く安全で安価な過酸化水素からin situで調製される次亜ヨウ素酸塩触媒を用いる1-ナフトール誘導体のエナンチオ選択的酸化的脱芳香族化反応であり、対応するスピロラクトンを高いエナンチオ選択性で得ることに成功した(Chem. Lett. 2015, 44, 179; editor’s choice)。②光学活性ヨードアレンとm-CPBAからin situで調製される光学活性超原子化ヨウ素(III)触媒を用いる1,2-ジオールから誘導されたフェノールのエナンチオ選択的酸化的脱芳香族化反応であり、有用合成中間体である光学活性MOBの触媒的エナンチオ選択的な合成法の開発に初めて成功した(現在論文投稿準備中)。③安価で酸化能力の高いナトリウム次亜塩素酸塩五水和物を用いるフェノールの効率的かつ実用的な酸化的脱芳香族化反応を開発に成功した(Chem. Lett. 2015, 44, 381)。
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