研究課題
特別研究員奨励費
個々の細胞を多角的に詳細解析した後に目的細胞だけを選別できる新しい技術が求められている。そこで本研究では、光応答性の細胞固定化剤であるPEG脂質誘導体を用いて一細胞アレイを作製し、顕微鏡観察の後に目的細胞のみを光照射と送液によって迅速簡便に単離することが可能な細胞チップの開発を目的とした。前年度の研究において、光分解性PEG脂質の共重合体の開発により、固定化された細胞がより光遊離しやすい表面を構築した。しかし、依然として、目的細胞の非特異的な基板への固定化力が存在し、細胞の選択にはシリンジポンプを用いて制御されたせん断応力の負荷が必要であった。今年度は、実用的な細胞選択技術の構築を目指し、非特異的な細胞の基板への固定化力をゼロとし、細胞選択アプリケーションを行うことを目的とした。そこで本研究では、光照射によって初めて細胞が固定化されるようになる新規光活性化PEG脂質を開発した。本分子を修飾した表面を用いることによって、目的の細胞のみを基板に光固定化・選別できる。この時、目的外の細胞は全く基板へ非特異吸着を起こさず、ポンプを用いない穏やかな洗浄操作によって簡便に除去できた。実用的なアプリケーションとして、血中循環ガン細胞(CTC)の単離を行った。まず、坦ガンマウスから採取した末梢血中のCTCを抗体により蛍光標識した。これを光活性化PEG脂質表面に播種し、蛍光により検出したCTCを光固定し、基板表面を穏やかに洗浄したところ、数万以上におよぶ目的外の細胞はすべて基板上から除去され、数細胞のCTCのみが基板上に単離された。また、微小な穴が無数に存在し、細胞を精密に配置可能なチップに本分子を修飾することにより、一細胞単位で配置された細胞に対しても上記の細胞光単離が可能であった。以上のように本研究では、新規の機能性分子を開発し、顕微鏡観察後に一細胞単位で細胞を単離可能な技術を確立した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
J. Biosci. Bioeng.
巻: 120 号: 6 ページ: 630-636
10.1016/j.jbiosc.2015.04.001
110010022644
Macromolecular Bioscience
巻: 14 号: 12 ページ: 1670-1676
10.1002/mabi.201400312
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/nagamune/index.html