研究実績の概要 |
本研究は車載用などの移動体に搭載される電力変換器を小型軽量化・高電力密度化することを目的としている。その方法としては, 多相インターリーブ方式に磁気結合技術を適用することで変換器内で主要な体積を占めるキャパシタやインダクタの双方の体格低減を図る。特に,磁性部品は高価なレアメタルやベースメタルを基本とした金属資源からなる受動素子であるが、今後新興国をはじめとする経済発展にともなってこれら電子機器などで使用される金属資源の価格も上昇している予測が立てられている。こうした背景に対して, 磁性材料の性能向上に期待するだけではなく, 回路の小型化に適した回路方式に対して磁気設計の視点から小型化を実現することが狙いである。 本年度は, 電力変換器の小型軽量化に有効な結合インダクタの結合係数が飽和する問題に対して、電磁シールドを用いたアプローチを考案した。汎用のフェライトコア(EE型, EI型)で結合インダクタを構成した場合で従来の抱えていた問題としては, 結合インダクタの巻線が三脚コアの外側脚に配置されるような構造となるため漏れ磁束が外側脚に偏在し, 結合係数を高めることができないこと, 漏れ磁束が半導体駆動信号等に影響をあたることが懸念されており, 高密度化実装に対するハードルとなっていた。これに対して, 各相の巻線を覆いかぶさるように短絡巻線を用いて漏れ磁束を打ち消す方法を提案した。この内容に関しては, IEEJ Journal of Industry Applicationsに速報として研究開発レターを提出し, 採録に至っている。今後はこの手法等をSiCやGaNといった次世代パワー半導体デバイスを活用した高周波スイッチングへのノイズ問題に応用を進め, 電磁環境にやさしい電力変換技術にも発展させていきたいと考えている。また, この研究課題を通して確立した磁気設計技術のベースを取りまとめて博士論文を執筆した。
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