研究課題
特別研究員奨励費
これまで高齢者において認知機能と運動機能が関連しているという報告は多くされてきたが、それらは心肺系に依存する運動に関して特に議論されていた。近年になって運動制御系の能力、すなわち目標指向性であり精緻な計画や実行が必要となるような運動が高次な認知機能と関連することが明らかになってきた。筆者らの先行研究でもワーキングメモリと目標指向的歩行機能との関連があることが示されていたため、そのような関連を生む神経基盤を同定することを目的としてfMRI実験を行った。実験では、高齢の参加者らに対し運動機能の指標として目標指向的な歩行機能(椅子への着座姿勢より開始し、目標となる3m先のコーンを周回し、再びもとの着座状態に戻る)と単純な歩行(立位より開始し、ゴールである10m先まで歩く)を測定した。その後、fMRI装置内でワーキングメモリ課題を行い、この認知課題中の脳活動を測定した。これらのデータに対していわゆる相関分析を行い、運動指標の成績と関連するようなワーキングメモリ中の脳活動を測定した。その結果、運動成績が高い人ほど認知課題中の活動が高い脳領域として皮質下の領域を中心とした脳部位、すなわち視床、被殻、小脳が確認された。これらの部位は運動に関わる領域として古くから知られている部位であった。さらに逆相関、つまり運動成績が高い人ほど認知課題中の活動が低い領域として、前頭葉を中心とした活動が見られた。このように、本研究では皮質下領域や小脳での脳賦活量の低下と、前頭葉での活動亢進という、減衰と増大のパターンが確認できた。行動データと脳活動との相関をとるという手法だったため、結果の解釈にいくらかの制限はかかるものの、比較的明瞭に認知と運動の関係性についての基盤が捉えられたのではないかと考える。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in Aging Neuroscience
巻: 7 ページ: 1-9
10.3389/fnagi.2015.00186
120005947003
Journal of the American Geriatrics Society
巻: 63 号: 7 ページ: 1355-1363
10.1111/jgs.13481
Journal of American Geriatrics Society
巻: in press