研究実績の概要 |
本研究の目的は始原的隕石中に存在する直径1mm程度の球状ケイ酸塩であるコンドリュールのストロンチウム安定同位体比(84Sr/86Sr)を超高精度で測定し、初期太陽系内で微粒子に生じた物質循環・物質進化プロセスを解明することである。初年度の研究でコンドリュール11粒のストロンチウム同位体比を一粒毎に測定し、各コンドリュールの大きさに相関が見出しうるデータを得た。今年度は測定したコンドリュールの数をさらに10粒増やし、その成果を国際学会で発表した。 また、初期太陽系内で生じたプロセスの解明に向け、より広範囲の時空間に対して言及できるよう、ルムルチコンドライト、普通コンドライト、炭素質コンドライト、エンスタタイトコンドライトの全岩ストロンチウム同位体比の測定を複数回行った。測定には通常の方法よりもさらに高精度で測定できる“ダイナミック法”を用いた。その結果、R,L,LL,ELタイプのコンドライトの84Sr/86Sr比は標準物質と比較して低く、H,CO,CV,CMの84Sr/86Sr比は高く、EHの84Sr/86Sr比は標準物質と同等であることを見出した。確度が十分でないデータを含むため各コンドライトのSr同位体比の測定数は今後増やしていく必要があるが、体積に占める構成要素の割合が大きく異なる各コンドライトの全岩ストロンチウム同位体比が異なることは非常に興味深い。予察的な考察となるが、この違いは同じ隕石に含まれる各構成要素の同位体比が異なることが原因である可能性がある。コンドライト種ごとにコンドリュールのストロンチウム同位体比の差の有無を決定することは初期太陽系内で生じた微粒子に生じたプロセスの解明に対して大きな制約を与えられると考えられる。またEHのストロンチウム同位体比に異常がなかったことはNd同位体比の先行研究と調和的である。今後、地球のビルディングブロックとしての議論できる可能性を大いに持っている。
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