研究課題
特別研究員奨励費
前年度は現生主竜類(鳥類・ワニ類)を解剖したが、本年度はそれらに最も近縁な外群である爬虫類(カメ類・トカゲ類)を観察し比較した。その結果、とくに筋の両端がどちらも足部内で付着しているような筋を新たに細分したことで、ワニ類で知られていた詳細な足部筋の分類と、ほぼ全て対応づけることができた。さらに、それらの大半について骨格上の付着痕を確認することができた。これらの結果から、ワニ類が主竜類の祖先に近い状態を保持している一方で、鳥類は数・形態の上で他の爬虫類と大きく異なっており、主竜類の共通祖先から鳥に至るまでに顕著な変化が起こったと推定された。化石主竜類に関して、昨年度は国内外で、主に主竜類および恐竜類の基盤的な分類群について調査したが、本年度は国外において、より派生的な恐竜類を中心に調査した。その結果、これまで観察してきたものを含めて、多くの筋痕が残されていることが明らかになった。各筋痕の出現や欠失のタイミングを系統樹上で明らかにすることで、足部の筋が進化史上いつ、どのように変化したかを推測できる。これに適した祖先形質復元解析を行うために、各形質の状態を数字で表すコーディングという作業を行い、データマトリクスを作成した。また、複数の先行研究の成果から解析に用いる系統樹の形を設定し、各クレードの初出年代から枝の長さを設定した。その結果、足部の筋の変化は特定の時点で急激に起こったのではなく、鳥に至る系統の中で徐々に進んでいったことが判明した。特に、足部の筋が減少し、その機能を脛腓骨や大腿骨から起始する筋が代替していく傾向が見られ、後肢の末端を軽量化し歩行や走行を効率化するよう、時間をかけて変化していたことが判明した。鳥類に至る系統では体の他の部位(股関節や尾など)でも運動機能に関わる様々な変化が起こっていたが、足部はそうした変化に影響は受けず、独自に変化していったことが判明した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
Journal of Vertebrate Paleontology
巻: 36 号: 4 ページ: e1116995-e1116995
10.1080/02724634.2016.1116995