ユビキチン修飾の構造は、「ユビキチン鎖の種類」、「長さ」、「複雑さ」の3つの要素から成り立つ。「種類」・「複雑さ」については質量分析計や特異的抗体により識別が可能となってきたが、生体試料のような微量サンプルから検出し定量することは困難である。また、「長さ」の解析法はこれまで存在せず、そのためにユビキチンシグナルの発動原理には不明な点が多く残されている。申請者は、ユビキチン鎖結合プローブによるユビキチン鎖の捕捉・保護及び、トリプシン消化を組み合わせることによりユビキチン鎖長を決定する手法(Ub-ProT法: Ubiquitin chain-Protection from Trypsinization)を考案し、生体試料におけるユビキチン鎖長の解析を試みた。モデル系として出芽酵母細胞内に存在するグローバルなユビキチン化基質についてユビキチン鎖長決定を試みた。その結果、増殖細胞では基質タンパク質に平均2~6個のユビキチン鎖が結合していることが明らかとなった。「ユビキチン鎖の長さと種類の関係」を明らかにするため酵母ライセートからUb-ProT法により得られたサンプルを分子量により分画し、質量分析計を用いて主要な5種類のユビキチン鎖を絶対定量した。この結果、ユビキチン鎖の種類によりユビキチン鎖の長さが異なることか本研究により初めて明らかとなった。さらに、プロテアソームの上流でユビキチン基質の仕分けに関与するシャペロン様分子Cdc48/p97変異体中ではすべての種類のユビキチン鎖の長さが伸長していることが明らかとなった。
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