本研究では、代数体上の楕円曲線と保型形式との間の対応関係を見出すことを念頭におき、小さいコンダクターをもつ楕円曲線の考察から出発して、対応するであろう小さいレベルをもつ保型形式の構成を目指している。交付申請時には具体的な研究内容として次を挙げた。1. 至る所 good reduction をもつ楕円曲線の決定手法の構築とその実装、2. 代数体上で解をもつ単数方程式と、それに対応する至る所 good reduction をもつ楕円曲線の構成、3. 至る所 good reduction をもつ楕円曲線に対応する保型形式の考察。 前年度、1の至る所good reductionをもつ代数体上の楕円曲線の決定アルゴリズムを構築した。本年度は、そのアルゴリズムを与えられた素数の有限集合でのみ bad reduction をもつことも許した楕円曲線の決定アルゴリズムに拡張した。また、アルゴリズムの議論を整理することで、至る所 good reduction をもつ楕円曲線決定のプログラムを書き直し、このプログラムを用いて、多くの具体例を得ることに成功した。2については、前年度構成した単数方程式の解から得られる至る所 good reduction をもつ楕円曲線の無限族に、Tateによる具体例の構成のアイデアを元にして新たに得られた無限族を加え、論文としてまとめることができた。3の楕円曲線に対応する保型形式については、成果と呼べる段階には達していないが、新たなプログラムで得られた楕円曲線に対応する保型形式の実例計算を行った。
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