研究実績の概要 |
Ni基合金は優れた高温強度と耐酸化性を有することから、温室効果ガスの排出削減や化石燃料の使用削減に最も寄与する重要な材料である。そのため、この合金の長時間の熱暴露による機械的性質の劣化や、その原因になる組織変化を調査することは非常に重要である。 以上から本研究では組織形態に及ぼす格子ミスフィットの影響を調査した。商用Ni基合金の中では比較的単純な組成を有するInconel X-750 (Ni-15Cr-7Fe-1.5Al-3Ti-1Nb)を基本とし、そのTi/Al含有比を0.3-1.0に、またその総量を4.50―9.00 at%に調整した合金をアーク溶解によって用意した。この試料に溶体化熱処理および1073 K/100 h, 1173 K/ 10 hの時効熱処理を施し、析出組織を得てその定量化を行った。AlとTiの比を変化させることでγ母相およびγ’析出相の格子定数が変化し、異なる格子ミスフィットを持つ合金を得た。 この試料に対し、モーメント不変量と呼ばれる画像特徴量を用いることで、その形状およびその分布を大量に解析することに成功した。その結果、格子ミスフィットが高い合金においてγ’析出相の形状は立方体状に近づく傾向を確認するとともに、約5%を上回るγ’析出相体積率を示し高い格子ミスフィットを有する合金において、粒子同士が隣接することによりその形状にも影響を及ぼすことを明らかにした。 この合金はγ’析出相の体積率は5-30%程度を示すが、10%以上の体積率を有し、かつTiの組成が元も多い合金において顕著に隣接し、最も立方体状化したγ’析出相が得られる。これはTiの添加量が最も多い合金は最も高い格子ミスフィットを示すため、それに由来する析出物周辺の弾性場の影響によるものと考えられる。
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