研究課題
特別研究員奨励費
【研究目的】ヒトの非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)における病因・病態を完全に呈するモデル動物は確立されておらず、このことがNASHの病態解明や治療法の開発の障害となっている。また、NASHの予後である肝硬変や肝癌発症を考えると、肝線維化の発症・進展を抑制することが重要であると考えられるが、齧歯類は線維化を発症するまでに長期間を要する。本研究では短期間で高度な線維化を伴うNASH齧歯類モデルを作成することを目的とし、それと同時に肝線維化の発症に寄与する食餌因子を検証した。また、抗酸化能を有する青色素フィコシアニンによるNASH予防効果を検討した。【結果】メタボリックシンドロームモデルであるSHR/NDmcr-cpラットおよび通常の遺伝的背景をもつSprague-Dawleyラットに高脂肪・高コレステロール(HFC)飼料を摂取させたところ、9週間という短期間で肝臓において高度な脂肪沈着、小葉内炎症および肝細胞の風船様腫大を特徴としたNASH様肝病変を発症した。また、高度な肝線維化もみられ、長期間の飼育によって肝硬変に至った。一方、コレステロール無添加の高脂肪食を摂取した個体は、NASHと診断されるような肝病変および肝線維化を発症しなかった。肝臓の脂質・胆汁酸代謝を検討した結果、HFC飼料の摂取は脂質や胆汁酸の肝外への排出などの代謝経路に影響を与え、NASHおよび肝線維化の発症への寄与が考えられた。本モデルにフィコシアニンを摂取させると、血中ASTおよびALTを低下させたものの肝臓の組織学的改善には至らなかった。本実験は従来の肝線維化モデルの作成手法である遺伝子操作や肝毒性物質の投与などに依ることなく、ヒトが通常摂取する食事成分による新規NASH線維化モデルの開発に貢献した。また、食事性コレステロールが肝線維化の進展を促進する因子であることを明らかにした。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Hepatolgy Research
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