研究課題
特別研究員奨励費
本研究課題は、複数の感覚を利用して意思決定を行う動物が利用する感覚の能動的な選択を行うことを、キンカメムシ類の配偶行動をモデル系として明らかにするものである。平成27年度までに、ナナホシキンカメムシは、雄の体色(視覚)や、基質振動(振動感覚)、体表面に分泌される化学物質(化学感覚)、などを雌が受容することで配偶者選択を厳密に行うことを明らかにしてきた。本年度は、これら複数の感覚のなかでも同時並列的な利用が予想される振動感覚と視覚について、1)カメムシの感覚受容システムの詳細を解明し、2)各種感覚の同時並列的利用様式を明らかにすることを目指した。カメムシは、腿節末梢部に弦音器官と呼ばれる特異な細胞群をもち、雄雌が振動により交信する。電気生理学的解析手法を用いて、脚から伝わる振動への脚部神経の応答を調べたところ、雄雌間の交信で利用される100Hz以下の低周波領域に強く反応を示した。外科手術により弦音器官を切除すると雄雌間の振動交信が阻害されたことから、これら細胞群が振動受容に関与していることが明らかになった。昨年度、雄の体色を色付きエナメルで着色し雌の反応を調査する実験を行ったが、本年度採集した個体で追試を行ったところ、雌は本来の体色に近い透明や緑で着色された雄が振動すると反応を示したが、黒や白で着色された雄には反応を示さない結果が得られた。複眼を被覆し視覚情報を遮断された個体はすべての色の雄に反応を示したことから、視覚情報の存在下では振動感覚情報の査定が厳密に行われている可能性が高い。一連の結果は、ナナホシキンカメムシの雌は、状況に応じて振動感覚や視覚など各種感覚情報への依存度を可塑的に変えて配偶者である雄を選択することを示唆している。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell Tisue Res.
巻: 366 号: 3 ページ: 549-572
10.1007/s00441-016-2480-0
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日本応用動物昆虫学会誌
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130004704258