研究概要 |
東工大のキャンパスグリッドを活用して大規模なタンパク質のフォールディングシミュレーションを実行した.シミュレーションには一般的な分子動力学プログラムAMBERを利用した.ジョブのスケジューリングツールとしてはCONDORを利用した.モデルタンパク質として20残基からなるTrp-Cageを選択し,50nsのシミュレーションを200本実行した.それぞれのジョブはある有閑マシンにおいて実行されるが,別のユーザのジョブが走り出すとチェックポイントファイルを生成して他の有閑マシンに異動する.各々のジョブは平均33ホストを利用して計算を終了させた.得られた200本の軌道には,58回のフォールディング,31回のアンフォールディングが含まれていた.これらを解析する新しい手法として軌道アラインメント法を開発した.アラインメントスコアから距離行列を作成して軌道の系統樹を描いた.この図を解析することでフォールディング軌道を分類することができる.Trp-Cageには正しい天然構造と,Trpのコアへの入り方が異なる擬天然構造があることがわかった.天然構造に至る軌道と擬天然構造に至る軌道はフォールディングする前のTrpの運動に違いが見られた.アンフォールディング軌道も時間反転させることでフォールディング軌道と同様に扱うことができる.系統樹にアンフォールディング軌直を加えても,フォールディング軌道と分離せず混合してしまう.すなわち,フォールディングとアンフォールディング軌道は見分けがつかない.
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