研究概要 |
ゲノム配列が解読された後は、ゲノムそのものが構築される原理を解明することが重要である。本研究では複雑なゲノム構築原理の内、ゲノム分配機構に焦点を当て染色体工学的な手法を用いて、高等動物セントロメアの形成機構の解明を目指す。本年度は、これまでの研究の継続性を重視してニワトリB細胞由来のDT40細胞を用いてCENP-A、Nuf2、Hec1を対象に条件的ノックアウト細胞の作成と表現型の解析を行った。以下に結果を述べる。1)Nuf2およびNuf2と相互作用するセントロメアタンパク質Hec1のノックアウト株を作成した。両ノックアウト細胞株の表現系解析から、いずれの株も約450分の細胞分裂遅延を起こした後死滅することが分かった。その際、CENP-A,-C,-Hなどのインナーセントロメアタンパク質の局在に変化は見られなかった。一方CENP-HやCENP-Iのノックアウト株においてNuf2やHec1の量が減少していた。また、Hec1は細胞周期チェックポイントタンパク質であるMad2と結合していることが分かった。さらにFRAP解析の結果、Nuf2複合体はセントロソームにおいてダイナミックな挙動をして、セントロメアでは、安定した構造をとることを明らかにした。2)CENP-Aのノックアウト細胞でBubR1というチェックポイントタンパク質の局在が失われた。CENP-Aのノックアウト株では、最初に紡錘体チェックポイント機構の活性化が起きて、細胞周期がM期で遅延した後、分裂後期に入って行くことから、CENP-Aはチェックポイントの「活性化」より「維持」に影響を与えると結論した。3)ヒト染色体由来の人工染色体を保持するDT40細胞を対象にして、RNAiマシーナリーに関与するDicer遺伝子の条件的ノックアウト細胞を樹立した。Dicerの発現が失われた細胞で、ヒト人工染色体のセントロメア領域からのRNA転写が確認できた。セントロメア形成に関わるDicerの影響を現在解析している。
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