研究概要 |
性決定および性分化初期過程に関与する可能性のある性染色体、特にW染色体上の遺伝子を網羅的に検索する目的で、ニワトリ2日胚(Hamburge-Hamilton stage 12〜13),3日胚(stage 19〜20),4日胚(stage 24〜25)の胚全体、5日胚(stage 27)の未分化生殖腺+中腎の一部からそれぞれ雌マイナス雄サブトラクションcDNAライブラリーを作製し、各ライブラリーから約5,000クローンずつ、合計21,120クローンをマクロアレイ化した。これらのマクロアレイをそれぞれ対応するステージの雌マイナス雄、雄マイナス雌サブトラクションcDNA,雌トータルcDNA,雄トータルcDNA, W染色体上の既知遺伝子PKCI-W cDNAをそれぞれプローブとして逐次ハイブリダイゼーションを行った結果、サブトラクションcDNAプローブで1127個、トータルcDNAプローブで104個の雌特異的発現の著しい、PKCI-W以外のcDNAクローンが選別された。サブトラクションcDNAプローブで多数のクローンが選別されたことは、これらのクローンがコピー数の少ないmRNAに由来することを示唆した。また、1127個のクローンの中、2日胚から170個が得られたことは、生殖腺分化(6日胚以降)に著しく先行して雌特異的な遺伝子発現が行われていることを示すもので、興味深く思われた。'そこで2日胚、3日胚、4日胚からサブトラクションcDNAプローブで選別され556クローン中532クローンをそれぞれアルカリホスファターゼ標識プローブとして、5種類の制限酵素でそれぞれ消化した雌雄のゲノムDNAに対するサザンブロットハイブリダイゼーションを行い、W染色体上の遺伝子由来と予想される67クローンを選別し、これらをハイブリダイゼーションのパターンから15タイプに分類した。各タイプに属する1クローンずつのcDNA塩基配列を決定したところ、W染色体上の遺伝子として既知のSPIN-Wに相当する3タイプ、ATP5A1Wに相当する1タイプの他、W染色体上の数種の未知の遺伝子由来のcDNAクローンが存在することが示唆され、塩基配列解析とW染色体上の局在部位の解析を進めている。
|