研究概要 |
脳動脈瘤の破裂による死亡は、全死因の2%を占め、形成には遺伝的要因が存在する。我々は、脳動脈瘤形成に関わる遺伝子の検索を行った。 1家系に3名以上の脳動脈瘤、あるいはくも膜下出血を有する29家系の125名を解析対象とした。解析対象者はくも膜下出血あるいは脳動脈瘤を証明されたもの、60歳以上でMRAにより脳動脈瘤が無いことが確認されたものとした。検索は2段階方式で行った。まずはじめに10cMの精度で全ゲノムのmappingを行い、p<0.05以下の領域を抽出した。ついで、1-2cMの解像度でFine mappingを行い、p<0.05を遺伝子座候補領域とした。解析では、非発症者は形質不明として処理した。解析には、遺伝形式を仮定しないノンパラメトリック法を用い、NPLを計算した。解析ソフトは、Genehunter、およびMerlinを用いた。 75%、50%、25%のlocus homogeneityを仮定した場合、29家系における検出力はそれぞれ、99.7%、93%、52%であった。1段目の全ゲノム解析では、Ch12,Ch15,Ch17,Ch19,Ch20およびChXが、抽出された。ついで、Fine mappingの結果、Ch17(D17S2196,NPL=3.18)、Ch19(D19S412NPL=1.82),ChX(DXS8019,NPL=1.98)の3領域を遺伝子座候補領域とされた。これら領域のうち、Ch19,ChXは、フィンランドから報告されている家系と共通した遺伝子座である。Ch19の連鎖領域にあるAPOE遺伝子の多型がくも膜下出血と相関すると報告されているため、検証した。発症者においては、ApoE2-=1.9%,ApoE3=88.7%,ApoE4=9.4%であり日本人のアリル頻度と差は無く原因遺伝子とは考えられなかった。
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