研究概要 |
個体の発生過程や組織の再構築時にはcadherinを介した細胞間接着のダイナミックな再構築が重要な役割を果たしている。このような細胞間接着の再構築には、空間的位置情報と時間情報が正確に細胞内に伝達、統合され、'接着装置が再構築されることが必須である。申請者らは低分子量GTP結合蛋白質Rhoファミリー(Rac1、Cdc42)と標的蛋白質IQGAP1がcadherinを介した細胞間接着を制御していることを明らかにした。しかし、これら限られた分子にのみ焦点をあてたアプローチだけでは細胞間接着の制御に関わる分子を網羅的には解析できない。本研究では細胞間接着の分子基盤をより網羅的に明らかにすることを目的とする。 本研究では、細胞間接着再構築時に関与する蛋白質を網羅的に同定し、性状解析を試みた。cadherin, catenins, IQGAP1およびRhoファミリー結合蛋白質についてアフィニティーカラムや免疫沈降を行い、β-catenin結合蛋白質としてスキャフォールディング蛋白質KIAA0705と、KIAA0705を介してβ-cateninに結合する蛋白質として低分子量GTP結合蛋白質Rap1の活性制御蛋白質PDZ-GEF1を同定した。またPDZ-GEF1結合蛋白質としてPSD-95とBPAG1eを同定した。さらにRNA干渉法により、これらの蛋白質を機能欠損させた場合の表現型を調べた。その結果、Rac1やIQGAP1の機能を欠損させた細胞においては、細胞間接着部位へのE-cadherin, β-catenin, α-cateninの集積が有意に低下することが明らかとなった。またIQGAP1の機能を欠損させた場合Rac1の活性が低下することを見出した。以上のことより、E-cadherinを介した細胞間接着によりRac1が活性化され、IQGAP1を介したアクチンの集積を促進し、その結果細胞間接着が増強する、といったpositive feedback loopを想定している。
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