研究概要 |
本研究では、進化の過程で最適化されてきた原核細胞の環状染色体の構築に関わる原理を見いだし、その細胞長の1000倍もの長さを持ちながらバクテリア細胞内に納められている核様体の仕組みを解き明かすことを目的とした。バクテリアの核様体形成に関わる要因として、染色体の全体構造そのもの、あるいは細胞増殖の様式、さらに局所的な染色体配列等がどのように影響するか明らかにすることを試みた。 1)バクテリア・セントロメア様領域の位置効果 染色体の複製起点(oriC)の近傍に、私達が見いだした染色体分配のシス機能領域(migS)は位置する。このシス領域を染色体の別の位置に移して染色体分配への影響を調べる。 2)細胞周期による核様体の形態変化 生細胞での核様体の形態を観察し、細胞周期によるその形態の変化を明らかにし細胞活動との関連を見る。特に、マルチフォーク複製期には複雑な形態の変化を認めており、複製と核様体形態の関係を明らかにする。 これらの結果、 1)染色体分配のシス領域、migS,による染色体の移動を生細胞内で可視化するシステムを導入した。 2)migSを染色体終点領域に移すと、この部分が両極移動し、一方、複製起点領域は細胞中央部に留まったままになっていることを生細胞内の連続的観察から示すことができた。 3)細胞内の核様体のサブドメイン構造に一致して、複製起点領域が位置していることを示し、migS欠失株ではこのサブドメイン構造が見られなくなり、複製起点領域の分離に遅れがあることを明らかにした。 4)染色体の終点領域と複製起点の逆位変異株を作成し、終点領域側の逆位の点が、dif配列に近いと逆位の頻度が下がることを明らかにした。これは終点領域にならかの染色体ドメインの境界があることを示唆している。 以上の成果を得た。
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