研究概要 |
アルツハイマー病の発症の要因であるβ-アミロイド(amyloid β-protein, Aβ)は、前駆体タンパク(amyloid precursor protein, APP)のβ-セクレターゼ及びγ-セクレターゼによる2段階の切断を受けて生成することが知られている。これらセクレターゼに対する強力な阻害剤はアルツハイマー病治療薬として期待される。本研究は、多様なγ-セクレターゼ阻害剤の合成とその合成化合物を用いた機能の解明を目指している。強力なγ-セクレターゼ阻害剤として知られるDAPTをリード化合物として選択し、部分構造を可変した化合物を検討したところ、C端のブチルエステル部分をアミドにしたものには活性が保持されることがわかった。その結果を基にして、我々が独自に開発した固相を活用したコンビナトリアル合成へと展開した。合成ライブラリーの活性評価の結果、ベンゾフェノンアミドとした化合物は活性がDAPTの10〜100倍程度増強されることが明らかとなった。この結果により光アフィニティーラベル研究への展開も可能となった。すなわち、ベンゾフェノン基は光照射により近傍の官能基とクロスリンクが容易なため、光アフィニティーラベルの親和性基としても多用されている。さらに、我々はリガンド分子に光親和性基とビオチンタグを簡便に導入する新規合成方法論を独自に開発することで、DAPT誘導体の光アフィニティープローブ合成に成功した。現在、膜蛋白各分(γ-セクレターゼ)とのクロスリンク実験の結果、22Kdaの蛋白の検出を達成している。
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