研究課題/領域番号 |
15016037
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田中 光一 東京医科歯科大学, 大学院・疾患生命科学研究部, 教授 (80171750)
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研究期間 (年度) |
2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
6,900千円 (直接経費: 6,900千円)
2003年度: 6,900千円 (直接経費: 6,900千円)
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キーワード | 神経科学 / 脳神経 / 発生・分化 / グルタミン酸 / 欠損マウス |
研究概要 |
脳は遺伝的なプログラムだけでなく、環境からの入力や脳自身の活動により改変を受け完成されていく。生後の脳形成初期には、同期した自発性の神経活動が観察され、その活動が神経細胞の移動・シナプス形成・神経回路網の精緻化に関与している可能性が示唆されている。近年、自発性の活動は神経細胞だけでなく、アストロサイトでも細胞内カルシウム濃度の変動として観察され、それが脳の形成に何らかの役割を果たしていると考えられている。しかし、生後の脳形成初期に観察されるアストロサイト内のカルシウム濃度の自発変動がどのようなメカニズムで起こるかは不明であった。我々は、そのメカニズムについて検討した。測定した海馬CA1領域の77.5%のアストロサイトにおいて自発性の細胞内カルシウム変動が観察された。この自発性細胞内カルシウム変動は、グルタミン酸受容体の阻害剤では抑制されないが、グルタミン酸トランスポーターの阻害剤で抑制され、グリア型グルタミン酸トランスポーター欠損マウスでも、その頻度が減少していた。この自発性細胞内カルシウム変動は、L型カルシウムチャネルの阻害剤で抑制された。以上の結果を総合すると、生後の脳形成初期に見られる自発性アストロサイト内カルシウム濃度変動は、神経細胞から放出されるグルタミン酸が、アストロサイトに存在するグルタミン酸に取り込まれ、それにより生じるわずかな脱分極がL型カルシウムチャネルを活性化することにより起こることが明らかになった。アストロサイト内のカルシウム変動により、グルタミン酸やATPなどの様々な因子がアストロサイトから放出され、この現象が脳の形成に重要な役割を果たす可能性は高い。グルタミン酸トランスポーターは、細胞外グルタミン酸濃度の制御だけでなく、自発性アストロサイト内カルシウム変動を誘発することにより、脳の形成に重要な役割を果たしている可能性がある。
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