研究課題/領域番号 |
15016093
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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研究分担者 |
辰巳 晃子 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (90208033)
芳賀 敏実 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20192263)
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研究期間 (年度) |
2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
2003年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
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キーワード | ノックアウトマウス / L3 / Lhx8 / アセチルコリン / 前脳基底部 / 学習 / 記憶 / 空間認知 |
研究概要 |
L3/Lhx8遺伝子の機能を解析する目的でホメオドメイン部分を欠失したノックアウトマウスを作成した。このターゲッティングストラテジーはL3/Lhx8蛋白のLIMドメインが細胞で発現し、同一細胞で発現する可能性のあるLhx6蛋白の機能をドミナントネガティブ的に抑制することを狙ったものである。ノックアウトマウスはほぼ95%の割合で口蓋裂を発症し、おそらくこれが原因で出生直後に死亡した。生き残ったマウスにおいて脳を詳細に解析するとMGEに由来する線条体、淡蒼球などの組織に肉眼的な異常は認められないものの、前脳基底部に存在し大脳皮質、海馬などに投射することで知られるアセチルコリン作動性神経が特異的に脱落していることがコリンアセチルトランスフェラーゼ、コリントランスポーター、低親和性NGF受容体などの当該神経特異的マーカーが全て陰性となることから判明した(森ら、論文印刷中)。この「脱落」は神経細胞が発生分化の過程で細胞死に陥っているか、或いは別の神経伝達物質の表現型に分化転換しているかのいずれかの可能性が考えられる。生直後のノックアウトマウスの脳においてはターゲッティングベクター由来のeGFPの遺伝子が発現していることから、L3/Lhx8遺伝子を発現する細胞が細胞死に陥っている可能性は低いと考えられた。現在アセチルコリン作動性神経になるべき細胞が本遺伝子の機能喪失によりGABA作動性神経に分化する可能性を培養系を用いて検討中である。前脳基底部のアセチルコリン作動性神経は従来より学習、記憶などの脳高次機能に深い関わりを持っていることが知られており、アルツハイマー性痴呆患者の脳においても特に脆弱であることが注目されている細胞集団である。我々はこのノックアウトマウスで個体数がまだ少ない状況ではあるが(KOマウス2匹)、野生型との比較で学習実験を行ったところKOマウスでは活動性の亢進、Passive avoidanceにおける学習機能の低下、聴性驚愕反射での馴化の遅延、モリス水迷路試験における空間学習機能の低下などの傾向があることを見出した。前脳基底部のアセチルコリン作動性神経の選択的破壊は192-IgG-ricinなどを用いて達成可能ではあるが、ノックアウトマウスにおける発生過程での本神経系の選択的な脱落は今後学習記憶行動における有用なモデルになると考えられる。また本神経系に種々の遺伝子導入を選択的にできる面からもL3/Lhx8ゲノムの有用性がある。現在L3/Lhx8遺伝子のコンディショナルターゲッティングマウスを作成中である。
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